まずい店ナンバーワン
2007年 03月 22日
当時、部活の帰りに先輩と自転車を走らせて市内の飲食店巡りをするたびに気になっていた店がありました。「MM」という店です。いつもガラガラでボロボロの店内、やる気が全く感じられない看板。いつかはその店に行こうと思っていたのですが、貴重な小遣いをそんな胡散臭い店に使ってしまっていいのだろうかと不安でした。
しかし、行動力のあるK先輩(トロンボーン)が行こうと言い出し、仲間を募れと私にも命令が下りました。K先輩の下僕と化していた私には、拒否権はなかったようです。そんなわけで集まったのは先輩・同級生合わせて男7人。図らずも、いつもだめなことばかりやっているメンバーでした。ある日曜の部活終了後、その店に突入しました。
以下、多少誇張が含まれますが、記憶の範囲内で再現してみます。会話は方言に変換してお楽しみください。
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切込隊長I先輩「こんにちはー」
応答なし。
言いだしっぺのK先輩「こんにちはー」
かすかにテレビの音。
やがて一人の老人が登場。おそらく店主。年齢は店内の暗さのせいでよくわからない。
店主「いらっしゃい…」
店内は廃工場のような雰囲気である(幼少の頃、祖父がよく連れて行ってくれたプレハブ小屋に似ている)。粗末なパイプ椅子と小汚いテーブルに早くも気が引けてくる。
K先輩「お前この一番まずそうなやつ食え」
私「…」
やがて注文を取りに来る店主。7人はそれぞれ違うものを注文した。ちなみに私はチャーハン、500円。そして10分後。厨房から不思議な音が聞こえた。
「チーン」
…
S先輩「今のって電子レンジの音じゃないか?」
私「いくらなんでもレンジで加熱しただけのものなんて出さないんじゃないですか?」
そしてチャーハンが出てきた。最初の犠牲者は私のようだ。驚いたのは食器がアルマイトだったことだった。小学校の給食を思い出した。また、紅しょうががやたらと不健康な色だった。恐る恐る一口食べてみた。
私「うっ…」
K先輩「どうした、まずいのか」
泣きそうな私「まずいしぬるいです…間違いなく電子レンジです…油が半分乾燥してます…」
物はためしと、先輩たちが私のチャーハンに手を伸ばした。感想は大体同じだった。しかも、底にはちゃんと切っていない玉ねぎが隠れていた。体がふるえそうになった。
ほとんど拷問であるが、何とか食べきった。
なお、7人全員の料理が出てくるまで実に70分を要した。全てのメニューを同時に作ることはできないにしても、かかりすぎである。他の人の頼んだものも、それはそれはまずそうだった。一番に食べ終えてしまった私は、店内にある黄ばんだ漫画雑誌を読んでいた。
帰りの電車に乗った3人(K先輩、S先輩、私)は虚ろな表情で家路についた。その日、気持ち悪くてせっかくのカレーが食べられなくなったのは言うまでもない。親は心配して胃薬を差し出した。
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当時のトロンボーンパートには、先輩後輩同級生含めて変な人しかいなかったような気がします。同級生のT君だけは唯一といっていいほどまともでした。まあ、そんなT君も、いやらしい雑誌の読者投稿欄にイラストを送って掲載されるという、かなり特殊な人ではありましたが。