4つの“Konzertmusik”-2
2006年 02月 10日
(続き)
“Konzertmusik”のシリーズに話を戻しますが、いずれも非常に高度な技術が要求されているように思われます(Op.48は未聴のためわかりませんが…@TOWER.JPで見つけたのでいずれ購入予定)。例えば、これらの作品中で最もよく演奏されているであろう「弦楽と金管のための協奏音楽 Op.50」のスコアを見ると、弦楽器も金管楽器もかなり難しそうです(弦楽器の難しさは正直よくわからないのですが、聞いたところによればヒンデミットの作品は移弦が相当難しいそうです)。やはり「演奏会用音楽」よりは「協奏音楽」の訳語がしっくり来るような気がします。弦楽器と金管楽器がそれぞれに高度な技巧を披露し合うという点で、まさに「協奏」音楽なのです。特に終結部などは相当にスリリングです。それに対してOp.49はそれほど激しい作品ではありませんが、緩叙楽章でピアノとハープだけでずっと進行していく箇所が美しいです。何度か聞いて、やはり金管アンサンブルの演奏会でやりたいという思いを強くした次第です。誰かハープ弾いてくれませんかね。
ところで、ヒンデミットの作品には「長調」「短調」ではなく「交響曲 変ホ調」とか「トランペット・ソナタ 変ロ調」など、長・短をつけていないタイトルが目立ちますが、これは、彼独自の作曲理論によるのだそうです。つまりは中心音を設定した無調で、たとえば「変ホ調」と言った場合には、変ホ長調と変ホ短調の両方を混在させて使うのだとか。それであのように独特な響きが生まれるわけですね。
私は、ヒンデミットはそんなにマイナーな存在でもないと思っているのですが(吹奏楽界では昔から「ウェーバーの主題による交響的変容」が流行っていたはず)、実際のところはどうなんでしょうか?昔、T大オケでヒンデミットの「気高き幻想」をやった時、曲目解説には「日本ではヒンデミットはまだ認知度が低い」と書かれていたし、アンケートには「現代音楽はあまり取り上げないで欲しい」などと書かれました(あれのどこが現代音楽なんだろう…?)。
管楽器奏者やヴィオラ奏者には、ヒンデミットという作曲家の存在はかなり大きなものです(ほとんど全ての楽器にソナタを書いています。コントラバス・ソナタやアルトホルン・ソナタまで!)。あれだけたくさんの作品を残しているという点ではテレマンやバッハに通じる雰囲気もあります。これは余談ですが、「気高き幻想」をやっていた頃の金管分奏後の飲み会(まだ「庄や」本郷三丁目店があった頃です)では、よく先生が「ヒンデミットは、自分こそがドイツ音楽の正当な後継者だと言って憚らなかった。そこが面白い」という話をされていました。
結局何が言いたいかというと、ヒンデミットの作品は聞き込んでみると、そして更には演奏してみるとすごく面白いものが多いということです(前にも触れましたが「演奏する側に主体がある」=「実用音楽」の提唱者)。20世紀のドイツ・オーストリアでは最も好きな作曲家です。