人気ブログランキング |

バストロンボーンとは結局何なのか

明日からしばらく東京を離れますので、このblogも夏休みです。

-------

バストロンボーンとは一体何なのか、飲み会で「じゃあ君はバストロンボーンね」と言われて吹き始めてから7年、ずっと考え続けてきました。なぜ、オーケストラのホルンはあんなに音域が広いのに同じ楽器を使っていて、トロンボーンだけテナーとバスの分業になっているのか。バストロンボーンの存在意義というのはどこに見出したらよいのか。

かつてトロンボーンが「サックバット」であった頃は、3人がそれぞれ異なる管のサックバットを使っていました。そして、バロックから古典派の時代になると、スコアには「アルト・テナー・バス」の指示が見られるようになりました。それが現代になると、スコアには「トロンボーン」としか書かれなくなりました。今、世界の主流は、テナーバス2本+バス1本という組み合わせだと思います。しかし、「バストロンボーン」というのは、現代のロータリーが2つついたものを指すわけではなく、もともとはF管の(テューバ、ホルンと同じ長さの)スライドの長いトロンボーンを指していました。だから、現在、「コントラバストロンボーン」と呼ばれるF管の巨大な楽器は、もともとは「バストロンボーン」で、本当のコントラバストロンボーンは、B管のテューバと同じ長さのものだったのです(このあたりは、『名曲の「常識」「非常識」オーケストラの中の管楽器考現学』(佐伯茂樹著、音楽之友社)に詳しいです)。

では、現代においてテナーと同じ長さの楽器にロータリーが2つくっついた「バストロンボーン」という楽器は、一体何者なのでしょうか?管は太いしベルも大きいので、テナーよりは多少太い音が出ます。ひょっとしたらそれによって低音でテナートロンボーンを包みこむような役割を要求されているのかもしれません。しかし、例えばパリトロンボーン4重奏団のように「全員テナーバス」の団体もあれば、「ミリエール4重奏団」のように、4番の人がテナーに2つロータリーをつけた特注楽器を使っている例もあります。パリトロンボーン4重奏団のあるCDのライナーノートには、「バストロの存在意義を危うくさせるベッケの4番」などと書かれています。

このように考えてくると、バストロンボーンの存在意義とは一体何なのか、全くわからなくなります。こういった矛盾を心にいつも抱えた素人奏者が私です。たぶん、もっといるはずです。

自分の目標というか、「こういう風に吹きたい」というのは、以下のように変遷してきました。

第1段階:バストロンボーンを吹き始めてしばらくは、いつも「君の音はユーフォニアムみたいだね」と言われ、いかにユーフォニアムから脱却してトロンボーンの音が出せるか、が目標でした。

第2段階:アメリカ系の野太い音のCDを聞き漁り、「やはりこういう太い音を出せるようにならないとだめかな」と思い始めました。マウスピースもだんだん大きく、深いものになりました。

第3段階:ドイツ管とジークフリート・チースリックの音に出会い、「太い音絶対主義」がだんだん嫌になってきました。もう少し、ソリスティックで輪郭のはっきりした、艶のある音を出せないかと思い始めました。

第4段階:金管アンサンブルを始めるようになってレイモンド・プレムルーの音に出会い、「もしかしたら、自分のこれからの方向性があるとしたらこれなのかな」と思い始めました。というのは、プレムルーはPJBE時代シングルロータリーのバストロンボーンを吹いていたのです。今のテナーバストロンボーンと一緒です。ここから、「バスもテナーも結局は一緒のB管じゃないか?」と考え始めました。

そして現在の目標は、「テナーと同じ質感、テンションで吹けること」です。よくいろんな人から「それはおかしい」と言われるのですが、この考えを変えるつもりは今のところないです。だから私のことが気に食わない人は、どうぞ強制排除してくださって結構です。異端者として扱ってもらうのは一向に構いません。だからといって、バストロンボーンの通奏低音としての役割を忘れていいと思っているわけでは決してなく、そのあたりのバランス調整が難しいと思っています。一瞬でも気を抜いてはならないのです。

話は変わりますが、私には好きな奏者、尊敬する奏者はいくらでもいますが「この人のようになりたい」という奏者は誰もいません。だってその人は私ではありませんから、その人になれるはずなんてないのです。最終目標は、自分の中にある自分の最高の姿のイメージだけなのです。要するに倫理の時間に習った話で言えば「イデア」です。こればっかりは言葉で説明することができないので、ただひたすらにイメージとの格闘です。『愛と幻想のファシズム』で鈴原冬二が自分の中にある幻のエルクと同化したいと思うように、です。
Commented by ようかん at 2005-08-11 18:30 x
こんにちは、古い記事へのコメントで申し訳ないのですが・・・

> 私には好きな奏者、尊敬する奏者はいくらでもいますが「この人のようになりたい」という奏者は誰もいません。最終目標は、自分の中にある自分の最高の姿のイメージだけなのです。

私もずっとそうでした。
この部分をみならいたい、と思うプレイヤーは何人かいるけど。
この考えを他人から否定されたこともありますが、変わらなかったです。

いろいろ悩みながら練習しているんだね。
Y堕くんの記事にはいろいろと共感する部分が多いので、今の頑張りに成果が出てバストロ続けていってくれるよう、応援しています。
Commented by Y堕 at 2005-08-12 20:34 x
お久しぶりです。
応援ありがとうございます。

悩みすぎて楽器をケースから出すまでに時間がかかることもしばしばな今日この頃ではありますが、身近に頼れる先輩がたくさんいるので、頼れる部分はたくさん頼りたいと思うようになった今日この頃でもあります。
by mako_verdad | 2005-08-04 20:00 | 演奏活動 | Comments(2)

1979年生まれ。某国立大学オケへの入団を機にバストロンボーンを始めました。現在はアマチュアオーケストラ「ザ・シンフォニカ」やいくつかのブラスアンサンブル団体で活動しています。2017年に子供が生まれたので徐々に活動縮小予定です。


by makorim
プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る