人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ソロ演奏について

人前でソロを吹くというのは実は大変なことです。と、かのデニス・ウィック(高名なトロンボーン奏者、かつてロンドン交響楽団の首席を長く務めた)も言っていました。小心者であがり症で度胸のない私にとっては、とても難しいことです。T大オケに入って「おさらい会」というソロ発表会があると知った時、本当に自分にそんなことができるのだろうかと甚だ不安でした。

トロンボーンのソロの曲というのは音楽史から見ても非常に少なく、誰もが知っているものといえばリムスキー=コルサコフくらいなものでしょうか。おさらい会では、そんな少ないレパートリー(もっとも、最近はけっこう増えていますが…デニス氏の著書巻末にも結構たくさんの曲のリストあり)の中からできそうな(できなくとも玉砕覚悟で?)曲を探して取り組むわけです。バストロンボーンのソロ曲レパートリーはテナーの7分の1くらいしかないです。昔、何かのCDのライナーノートに、「バストロンボーンはソロ演奏が難しい。だからレパートリーもないしCDを出すような奏者も世界に数人しかいない」と書いてあったのを思い出します。

私自身がバストロンボーンで演奏してきたソロ曲は以下の通りです。

1998年@同仁キリスト教会(目白)
♪J.E.Galliard/Sonata No.6
これは初めてということで、先生には「最初は古典の曲にしっかり取り組みなさい」と言われたのを覚えています。確かに、形式ということについては勉強になりました。しかしこれはチェロの曲なので、音域が広く、しかも、普通はテナーの人がやる曲なので、けっこうバストロ初心者にとっては大変なのでした。録音を聞いて思うのは、この頃はとにかく自分の音が細かったな、ということです。ちなみに、この年と翌年はピアノ伴奏を同期オーボエのK原さんに頼んでいました。K原さんは現在、OBオケの東京アマデウス管弦楽団で活躍中です。

1999年@YAMAHAホール(銀座)
♪E.Bozza/Prelude et Allegro
いきなりボザの難曲ですが、先生に、失敗しても構わないからやってみろと言われました。この曲には長いカデンツァがあり、テンポ設定を考えるのが大変です。レッスンでも、何回も注意を受けました。本番では、その肝心のカデンツァが緊張のためあまりうまくいかなく、げんなりして酒もおいしくなかったです。また、この時、筑波大OBであるC葉さん、U松さんが出演されましたが、その圧倒的な上手さに舌を巻きました。大いに触発され、次の年の曲をおさらい会が終わった次の日にもう決めていたのを覚えています。それにしても、ボザの曲はどれも似たようなものばかり…

2000年@YAMAHAホール(銀座)
♪A.Wilder/Sonata for Bass Trombone and Piano
でましたワイルダー。この曲は和声進行が変わっていて、イメージを掴むのに苦労しました。メロディも、次にどこの音に移るのかが予想できず、正しい音程で吹くのは至難の業でした。また、この曲は初めてやった「楽章もの」で、5楽章15分もありました。体力との戦いでもあります。4楽章の終わりにペダルのGの音が出てくるのですが、本番はそこを外してしまい、客席で聞いていたラッパのT中がニヤニヤしていました。悔しい。なお、この年から2年間、伴奏をホルンの後輩O村さんにお願いしました。ちなみに、この曲は、自分の実力を確認するために、折に触れて吹いています。最近スラーの技術が落ちてきたことがわかってしまいました。

2001年@カルラホール(経堂)
♪E.Sachse/Concertino
いよいよ現役最後の演奏です。この時も長いものを、ということで15分の変奏曲を選びました。変奏曲はやったことがなかったので、各変奏の対比をいかにするかが重要となり、そこはかなり苦心しました。技術的には実は簡単なので、レッスンでは「つまらなくならないようによく考えろ」と言われました。本番は集大成という感じで上手くいき、発表会自体のトリも務めさせていただき、いい思い出になりました。

2002年@スタジオ クロスロード(新大久保)
♪E.Bozza/New Orleans
またまたボザです。ボザのバストロ曲の中では最も有名なのでしょうか?すでに現役は引退したので、何か自由にやってみたいと思い、この曲を選びました。しかし、この曲は非常に難しかったです。曲の前半はほとんどがカデンツァで、ピアノとはさっぱり絡みません。また、後半は激しい跳躍の嵐で、終わりになると2オクターブ以上の跳躍なんてざらです。ロッテルダムフィルのベン・ヴァン・ダイク(ちょうどこの年の夏に来日してマスタークラスを開講していた)が吹いているCDがあるのですが、すごく流暢な演奏で、憧れました。伴奏は、フランスものということで(?)、フランス語に堪能でピアノもサックスもトランペットもマーチング指導もやるマルチな後輩N越君に頼みました。本番では、彼の卓越した音楽センスにずいぶん助けられました。そして、Fireworksカルテットのデビューでもありました。低音のタンギングができなくて、またラッパのT中氏にニヤニヤ笑われました。悔しい…
♪O.Heinl(arr.by H.Odagiri)/Die Verliebte Posaune
♪H.Fillmore(arr.by H.Odagiri)/Teddy Trombone
♪H.Fillmore(arr.by H.Odagiri)/Shautin'Liza Trombone

2003年@スペースDo(新大久保)
ソロでは出演していません。
♪V.Nelhybel/Ludus for Three Tubas
♪S.C.Foster(arr.by S.Konagaya)/Beautiful Dreamer
♪J.Lenon&P.McCartney(arr.by I.Luis)/Hey Jude

2004年@スペースDo(新大久保)
同じく、ソロでは出演していません。
♪D.Uber/from “Merodious Trios”(No.4,12,10)
♪A.Wilder/from “Ten Trios for Tubas”(No.1,4,7,8,10)
♪P.M.Dubois/Quatuor pour Trombones

うーん、やはり来年はソロで「も」出るべきですね。アンサンブルで責任分担して安住している場合ではない。がんばります。ということで、早速ジャパンテューバセンターの通販でEwazenの“Concerto for Bass Trombone(or Tuba) and Piano”を注文してしまいました。どうなることか、1年後に乞うご期待!
by mako_verdad | 2004-12-28 01:42 | 演奏活動

1979年生まれ。某国立大学オケへの入団を機にバストロンボーンを始めました。現在はアマチュアオーケストラ「ザ・シンフォニカ」やいくつかのブラスアンサンブル団体で活動しています。2017年に子供が生まれたので徐々に活動縮小予定です。


by makorim