女奴隷リューの位置付けは素晴らしい
2006年 04月 12日
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さて、トゥーランドットといえば中国のさまざまな旋律をプッチーニが巧みにオーケストレーションして大スペクタクルに仕上げているわけですが、中国を題材として取り入れている音楽作品は、特に20世紀以降多く目につきます。有名な例を挙げると以下の通りです。
♪マーラー 大地の歌(1909年)
最近マーラーが苦手な私も、これだけは普通に聞けます。テクストは唐代の詩。中国風の旋律が随所に登場します。テューバの出番がわずか6小節しかないことでも(あの、第4楽章の忍者でも出てきそうな箇所のみ)、一部マニアには有名です。トロンボーンの出番も、マーラーにしては非常に少ないです(役割はかなり重要ですが)。スコアは持っておらず、ちらっと見たことしかないのですが、第1楽章の最後、バストロンボーンはペダルAで「ばっ」と終わるのが非常に難しそうです。
♪ブゾーニ 歌劇『トゥーランドット』(1917年)
聞いたことないです。組曲版がNAXOSから出ているようです。
♪バルトーク バレエ『中国の不思議な役人』(1919年)
これは言うまでもないですね。まあ、舞台のほうには中国の役人が登場しますが、音楽にはあまり中国の要素は出てきませんね(トロンボーン3本のミュートによるメロディがちょっと中国っぽい?)。いつか全曲版をやってみたいものです。最初の、街の喧騒場面での荒々しいトロンボーンソロはバストロンボーンなんですよ。知らない方は、この機会にぜひ知っておいてください。
♪プッチーニ 歌劇『トゥーランドット』(1926年)
そしてプッチーニが出てくるわけです。第3幕の作曲途中(リューの自害場面)でプッチーニが死去、初演の指揮者はかのトスカニーニ。美しいアリアだけがプッチーニの本領ではありません。意外と前衛的な音響も多いです(これは『トスカ』もそうだと思います)。冒頭から増音程の跳躍だわ、ドラがゴンゴン鳴るわで、管弦楽的にも聞きごたえ十分です。3人の狂言回しはピン、ポン、パン(こんな名前つけるなよって感じですね。実際、中国では「国辱オペラ」として長いこと演奏されなかったそうです)。いかにも「ヨーロッパ人から見た中国」ですね。
♪ヒンデミット ウェーバーの主題による交響的変容(1943年)
第2楽章のメロディは、ウェーバーの『トゥーランドット』からの引用だそうです。本当に「中国風」なのか、聞いててだいぶ怪しいですが、そこは職人ヒンデミットが『トゥーランドット Ver.5.1』くらいにしているのでしょう。ところで、プッチーニ、ウェーバー、ブゾーニだけでなく、今までに12人の作曲家が『トゥーランドット』を書いているとか。確かに、物語としては魅力的なものだと思います。
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ヨーロッパの作曲家にとって、なぜそのように「中国」が魅力的な題材となり得たのか、ちゃんと考えたことはないです。単なる「エキゾティシズムへの好奇心」ではないと思っていますが。