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ストラヴィンスキー、メシアン、武満徹

突然ですが、20世紀を代表するこの3人の作曲家について書きたいと思います。

【イゴール・ストラヴィンスキー】

ストラヴィンスキーは、ほぼ同時期にバレエ3部作を聞きました。中1の時に吹奏楽コンクールで「火の鳥」抜粋を聞いたのが最初と言えば最初ですが。翌年、吹奏楽部の友人から物々交換で手に入れた(私が提供したのは「93年吹奏楽コンクール自由曲選」)ブーレーズ指揮の「春の祭典」「ぺトルーシュカ」を聞いて一気にストラヴィンスキーにはまりました。田舎の中学生などにはよくあることだと思いますが、当時最もよく聞いたのは「春の祭典」でした。こんな、乱暴で野蛮で不協和音だらけでありながら(当時はロックなどを聞いていたので、受け入れる余地が十分にあったのでしょう。ロックは、ある種の暴力性がその魅力であることは否定できません)緻密に計算された音楽を思いつく人間がいるということに感動を覚えました。中3の時には、2年間待ち続けてようやく入手したヒンデミットの「交響曲 変ロ調」のCDにカップリングされていた「管楽器のためのシンフォニーズ」という曲も知り、この頃から音楽に対する関心の中核が「旋律」でなく「和音」に移行していったような気がします。

その後しばらくは興味が薄れていたのですが、大学オケに入ってからはこれらの曲を実際に演奏できる(私にとってはとても重要なことです)チャンスが巡ってきて、にわかにストラヴィンスキー熱が再燃しました。曲決めで「火の鳥」に決まった時には、総会が終わると同時に5000円のスコアを購入しに走りました。バレエのデビュー作となるこの作品からすでに、彼の驚くべきアイディアがスコアから溢れ出ています。

その後「プルチネルラ」や「兵士の物語」、「詩篇交響曲」などいろいろ聞きましたが、トロンボーン吹きとして最も演奏してみたいのは「ぺトルーシュカ」であり(「春の祭典」は効果音的扱いばっかりです…)、聞いていて一番面白いのも「ぺトルーシュカ」です。退廃と洗練がごちゃごちゃに入り混じった感じがたまりません。


【オリヴィエ・メシアン】

メシアンという作曲家は音楽の教科書には載っていませんでした。しかし、高校の音楽のK先生が現代曲マニアで、私はこのK先生によって現代音楽への道を示してもらったと言ってもよいくらいです。高2の時、「大学見学会」という1泊2日のイベントがあり、私はそれに参加したのですが、2日目は自由行動だったので、初めて渋谷のタワレコに行きました。この機会に珍しいCDをたくさん買っておこうと思った私は、K先生にアドヴァイスを求めました。K先生の回答は、「ヒンデミットとメシアンのCDを買ってみろ」というものでした。結局、お金があまりなかったせいもあってCDは3枚しか買えませんでしたが、そのうち1枚の内容がメシアンの「クロノクロミー」「天国の色彩」「されば我、死者たちの復活を待ち望む」でした。それはこれまで聞いたことのない摩訶不思議な響きがし、夜中に1人で聞いているとめまいがしそうになりました。それから数週間後、再び上京の機会がやってきました。吹奏楽コンクールの全国大会です(中学の吹奏楽部の友人が多く入ったY商業高校を応援しに行ったのです)。高校の部で、何と「されば我、死者たちの復活を待ち望む」が演奏されていました。謎の打楽器がたくさん並んでいました(サンセーロというそうです)。

それからしばらくはメシアンの魅力がピンとこなかったのですが、大学オケにメシアンの好きなY(ホルン吹き)という友人がいて、彼に勧められた「トゥランガリーラ交響曲」の影響で色々と聞き始め、次第にのめり込んでいきました。彼の作品を語る上で欠かせないのが「移調の限られた旋法」「逆行不可のリズム」「鳥の歌」「キリスト教への深い信仰」なのですが、後期になるとこれの多用ばかりが目立ち、どうしても同じように聞こえてしまう曲が多いのが少し残念です。

特に好きな作品は「世の終わりのための四重奏曲」「主の降誕」「彼方の閃光」などです。「トゥランガリーラ交響曲」は一度演奏してみたいです。


【武満徹】

中学校の音楽鑑賞で武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」を聞いて、「??」と思った人は多いことでしょう。私もそうでした(むしろ、ノヴェンバー・ステップスの各段に添えられた作曲者のメッセージのほうが暗示的で面白かったです)。確かにこれは彼の代表作で、国際的に評価の高まるきっかけとなった作品ですが、何もこれを武満鑑賞の入り口にしなくても…と今になって思います。当時(60年代)の武満作品は前衛的な響きのするものが多く、とっつきにくい印象を与えることは確かなのですが、70年代後半からの諸作品は非常に魅力的なものが並びます。

それまでちょっと苦手意識のあった私が武満作品にはまった直接のきっかけは、金管アンサンブルのための「ガーデン・レイン」でした。初めて聞いたのはロンドンブラスの演奏によるCDですが、それまで金管楽器をこのように扱った作曲家はほとんどいなかったのではないでしょうか。霧雨と水墨画を思わせるモノトーンなこの曲にはすっかり参ってしまいました。そこから同じ金管アンサンブルの「シグナルズ・フロム・ヘヴン」、同じCDに入っていた「夢の引用」「How Slow the Wind」などから徐々に鑑賞レパートリーが広がっていきました。また、彼の作品はそのタイトルにも魅力的なものが多く、昔から1人で夢想(妄想ともいう)に耽ることが多かった私のインナースペースにはうってつけでした。「タケミツ・トーン」と呼ばれる夢幻的な響きも、一度はまるともう抜けられません。寝る前によく聞きます。

好きな作品は、やはり調性的な響きが復活してくる70年代後半以降のものです。無伴奏合唱曲のシリーズも非常に美しく、おすすめです。今、これ↓が欲しくてたまらないのですが、諸事情により数十万円貯金をしないといけないので、我慢しています。
http://www.shogakukan.co.jp/takemitsu/index.html


※ところで、この3人について書いたのは、武満が終生メシアンに深い敬愛を寄せ、ストラヴィンスキーが武満の「弦楽のためのレクイエム」を激賞したというちょっとしたつながりがあったことからです。

※武満とメシアンを比べて思ったのは、武満作品には日本人特有の「優しさ」が溢れていて、メシアン作品にはヨーロッパの「厳しさの歴史」が横たわっているのではないかということです。あくまで素人感想ですが。
by mako_verdad | 2005-10-11 23:54 | 鑑賞活動

1979年生まれ。某国立大学オケへの入団を機にバストロンボーンを始めました。現在はアマチュアオーケストラ「ザ・シンフォニカ」やいくつかのブラスアンサンブル団体で活動しています。2017年に子供が生まれたので徐々に活動縮小予定です。


by makorim