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easy sentimentalism

風邪をひいて頭がぼーっとしているせいか、妙に心が脆弱になります。こういう時に、ドビュッシーのピアノ曲やブラームスの室内楽などを聞くと泣いてしまいそうです。今日は雪が降っている、というのもあるかもしれません。東京は今日、初雪です。雪は人を感傷的にさせると思います。私だけでしょうか。

今日は年末、冬、雪などにまつわる音楽的思い出でも書いてみましょう。思い出だけを書き綴る(追憶する)ことが、すでに寂しい事態であり、私にとって色々なものを殺めてしまう結果になるのがわかってはいるのですが。

1992年の年末。私は中学1年生でした。この年、私の中学校の吹奏楽部は色々な人の協力を得て第1回定期演奏会を開催することができたのでした。私は偶然にもその場にいられて幸福であったと思っています。当時、練習は長くて辛く、少しでもミスをすると先生(女性)の怒号が飛び、指揮棒が投げつけられましたが、そんな厳しい指導はちっとも気にならず、我々は偉大な音楽の前に意志の塊となって無心に楽器を吹きつづけておりました。そんな中の1曲がチャイコフスキーの交響曲第5番です。定期演奏会で第2楽章(吹奏楽版)をやり、子供心に、「これは他の曲とは何か違うぞ」と思っていました。他のメンバーも感じたらしく、一緒になって「やっぱり本物は違うんだ」と感嘆していました。何だか勝手なことを言ってますが、田舎の中学校での出来事なのでお許しを。で、演奏会自体は11月の末に終わったのですが、チャイコフスキーは頭から離れず、年末になっても父が買ってきてくれたシャイー/ウィーンフィルのCDを聞きつづけていました(超田舎だからCDを手に入れるのも至難の業。何と県庁所在地まで行かないといけない…)。窓の外の雪景色を見ながら。東北の日本海側の冬は陰鬱です。晴れ間が覗く日はほとんどなく、毎日雪かきに追われます。そんな暗い気分が、あのチャイコフスキーの5番、弦とクラリネットの物憂げな開始に合っていたのでしょう。当時、チャイコフスキーはこの5番しか知らず、同じく有名な4番と6番は大学オケに入って初めて聞いたのでした。最近では、6番の「悲愴」が好きです。

1993年の年末は…あまり覚えていません。ベッドフォードの『波涛にかかる虹』という吹奏楽曲のきれいな響きが好きでよく聞いていたというくらいです。

そして1994年。高校受験の年ですね。巷ではtrfが流行っている頃で、クラスの話題はそればっかりでした。私もmasqueradeのシングルくらいは買って毎日聞きました。しかし、それ以上に私を捕らえて離さなかったのが、「吹楽Ⅱ」というCDに入っていた、平石博一の『時は時の向こうにある』という吹奏楽の曲です。人生初のミニマルミュージック。しびれました。これも、部屋から雪景色を見ながら何度もリピートして聞きました。他にやることがなかったんでしょうか。

時代は飛んで1997~8年。大学受験の年です。私の通った高校はいわゆる進学校で、その頃はセンター試験対策の放課後講習の真っ最中でした。マーク式の試験は嫌いでした。なぜなら、私のようなうっかり者は場所を間違えて書くとすぐ0点になってしまうではないですか。早くこんなつまらない時期は終わらないかなあと、通学(1時間以上かかる)途中は電車に乗っている時も歩いている時も、英語のリスニングの練習をするという口実で親に買ってもらった、当時はやや高額なMDプレイヤーで、色々な音楽に逃避していました。もしかしたら、このように神経過敏になっていた時期と、感受性が最も強い時期がぴったり一致したのかもしれません。本当に色々な音楽を聴きました。そして、そこにはなぜかクラシック音楽が一つも入らなかったのです。いまだに謎です。この時期、最も聞いたのはピアソラのタンゴです。ピアソラは担任の先生や音楽の先生に教えてもらいました。特に、「現実との57分間」というアルバムは毎日聞きました。今でも、あのバンドネオンの響きを聞くたびに、雪の降り積もる田舎の無人駅、窓の凍りついた電車、高田馬場駅の雑踏、秋葉原の裏通りの暗さ、新宿西口の不気味さ、雨の降る汚い駒場、新幹線の煙草臭さ、卒業式翌日に学校から自転車で3時間かけて帰ったこと、などを思い出します。他に聞いたのは、秋吉敏子、五十嵐一生、キングクリムゾンなど…節操がないですね。

その後は、オケ一辺倒の生活になり、あんまり思い出がない…やはり感受性は年々鈍っているようです。それでも、去年は矢野顕子のベストアルバムを毎日聞きました。久々に感傷的な気分になりました。

果たして、今年はそのような曲には出会えるでしょうか?

やはり頭がぼーっとしていると、書くことにもまとまりがない…。
by mako_verdad | 2004-12-29 11:31 | 鑑賞活動

1979年生まれ。某国立大学オケへの入団を機にバストロンボーンを始めました。現在はアマチュアオーケストラ「ザ・シンフォニカ」やいくつかのブラスアンサンブル団体で活動しています。2017年に子供が生まれたので徐々に活動縮小予定です。


by makorim