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音楽の教科書

もう5年ほど前になりますが、私の実家(旧)が火事になったことがありました。生まれてから9歳くらいまで住んでいたところがきれいさっぱりなくなっているのを見ると、何だか複雑な思いでした。平日の昼のことで、家族に大事がなかった(祖父がちょっと頭を火傷したけど)のが不幸中の幸いでした。

その後しばらくして、実家(新)の大改築を行うことになり、中学・高校時代に使っていた要らないものを焼いてしまうから帰ってきて整理しろと言われ、何度目かの帰省をしました。物置や段ボール箱をひっくり返して、うわーこんなにあったんだ、とびっくりしました。真っ先に捨てたのは教科書・問題集・高校で渡された膨大な宿題の類。今から考えるとかなり勿体無いです。「地図帳」とか「スタンダード 数Ⅱ」とか。そして滅多に単行本を買わなかったので大事に保管していた週間少年漫画誌(およそ7年分)。ああ、これで「究極!変態仮面」も読めなくなるなあ、と感慨深かったです。あとはおもちゃの類。ごく一般的な家庭の例に漏れず、我々兄弟も人並みに「聖闘士星矢のクロス」「SDガンダム」「ミニ4駆」などにはまっていました。しかし「ファミコン」は捨てず、1985年の購入以来20年、いまだに弟の手によって稼動しています。驚くべき寿命です。

長い前振りでしたが、ここからが本題です。実家(新)には、誰も弾けないのに中古のアップライトピアノがあり、そのおかげで中学時代の怪しい作・編曲活動が実現したわけですが、その部屋にあったものは捨てるのをすっかり忘れていました。

そう、音楽の教科書です。特に、中学校の頃は、音楽に関する参考資料と言えば「教科書」か、学校に置いてある「昔の吹奏楽コンクール課題曲のテープとスコア」であり、かなり間違った形の音楽受容がなされること間違い無しでした。だって、吹奏楽部に入って初めて聞いたのが「斜影の遺跡」「ネレイデス」などですから。どうやら、モーツァルトやハイドンやベートーヴェンは田舎の中学生には素通りするだけのものだったようです。それでもオーケストラのスコアを先生から借りて夏休みにただぼーっと聞いてたりする日もありましたが。何で吹奏楽ってあんなにパートの数が多いんだろう、とベートーヴェンの第5交響曲のスコアを読みながら思っていました。

この前帰省した時にまだその教科書があったので、ぱらぱらと眺めていたのですが、現在私の好きな作曲家ベスト5に入るであろう「ブルックナー」「シベリウス」について一言も書かれていないのです。名前すら載っていません。なぜ「ホルスト」や「ガーシュウィン」や「プロコフィエフ」が載って、「ブルックナー」が載らないのか。あまりに不公平だと思います。確かに、中学生にブルックナーがわかるかよ、と言われるともっともな判断かもしれません。しかし、一部の中学校ではコンクールでR.シュトラウスの「サロメ」(しかも「7つのヴェールの踊り」)を演奏しているという話を聞くにつけ、お前等意味もわからずにそんな曲ばっかり演奏しないでブルックナー聞けよ、と言いたくなります。ならないか。まあ、ブルックナーじゃなくてもモーツァルトでもベートーヴェンでもブラームスでも何でもいいんですが。

または、どうせやるなら、日本人なんだから伊福部昭の「サロメ」をやって欲しいです。

そのうち「中国の不思議な役人」や「ムツェンスク郡のマクベス夫人」を演奏する中学生が出てきたら(ひょっとしてもういるのかな?)いやだなあ…
by mako_verdad | 2005-03-23 01:07 | 鑑賞活動

1979年生まれ。某国立大学オケへの入団を機にバストロンボーンを始めました。現在はアマチュアオーケストラ「ザ・シンフォニカ」やいくつかのブラスアンサンブル団体で活動しています。2017年に子供が生まれたので徐々に活動縮小予定です。


by makorim